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R読書会/Zoom読書会

『小悪魔アザゼル18の物語』アイザック・アシモフ、小梨直訳(新潮文庫)

R読書会 2024.01.20
【テキスト】『小悪魔アザゼル18の物語』

      アイザック・アシモフ小梨直訳(新潮文庫
【参加人数】9名
※オンラインでなく対面形式でした。

<推薦者:参加者I>
◆7~8年前、古本として買って読み、妙に琴線に触れた。願いが叶ってみると見込みとは違う、というのが妙に頭に残っている。
◆「願いが叶っても現実は(思い描いていたものとは)違う」というパターンが気に入った。
◆(最近の)賞に入るのは、若い感性で書かれた作品が多く、こういうユーモア作品はあまり評価されない分野だと思うが、感性が鈍った私には若い人のような文章は書けないので、こういうジャンルに自分の可能性を見出そうかと思う。
私もユーモアがある作品を書くことが多いので、今回紹介させていただいた。皆さんの感性には合わないのではないか?
◆作者はロシア生まれでアメリカ育ち。ロシア人でもアメリカ育ちならこういう作品が書けるのかと意外だった。作風からイギリス人かと思っていたので。

<参加者A>
アイザック・アシモフの名前は知っていた。SFの分野ではかなりの重鎮であり、『われはロボット』で、有名なロボット三原則(=ロボットもののSFで使われる約束事)を一番最初に世に出した人。人間とロボットの関係、人間とロボットは同等の存在として扱われるかどうか、などSF的な思考実験の元を作った。読んだことはないのですが。
銀河帝国興亡史』の名称で知られるファウンデーションシリーズは、かなり未来の時代の銀河で文明が衰えたのちに、新たな文明が興るのを歴史として描いている。SF好きなら読んでいないといけないような作品。
◆あのアシモフが、こんなユーモア小説を書いているのか、と意外だった。たとえば遠藤周作もユーモアエッセイを書いているが、中心的な仕事は『沈黙』などの重い小説。だから、今回のテキストだけを読んで「アシモフってこういうのか」と判断するのは違うと思う。
◆軽めの作品として書かれているので、アザゼルは『トムとジェリー』や『ルーニー・テューンズ』のような漫画的な絵柄で思い浮かべたくらい。
◆願いが叶うが落とし穴がある、というのは落語に近い。落語にも死神など超自然の力が出てきたりする。西洋人のSFというジャンルで落語的なものを生み出したのがすごい。
ドラえもん』みたいでもある。道具の使い方を間違えて暴走してしまう……藤子不二雄も初期のSFにだいぶ触れているはずだからセンスの面で繋がっている。
◆SFも幅広い。星新一ショートショート
◆『小悪魔アザゼル18の物語』はオチまでのストーリーの流れがだいたい同じで人物の設定が違うくらい。
◆洞窟学者が出てくる「謎の地響き」。これだけはSF色が強くて面白い。人類を滅ぼす仕掛けが洞窟に残されているが取り出せなくなって……。
あとの作品は、男女がどうこうなって、という話。年のいった男が女性をどうこうしたい、というのは今の時代に読むときつい。80年代に書かれた作品で、読者層も限られているし、こういうジョークでよかったんだと思うが。時代が変わって、自分自身も変わっていると実感した。
C:出てくる女性が全部、目が大きくて、体に弾力があって、頭が空っぽ。
A:男性と同等に扱われていない。
E:どうもミソジニーがありますよね。
B:私は女性蔑視などを感じることなく読んでいたので差別主義者なのかと不安になりました……。

<参加者B>
◆古本で注文したものの届くのが遅くて(4、5日前に届いた)、参加するか迷ったけれど結構さくさく読めた。
◆面白いな、と。さっき仰られた「謎の地響き」もだし、「一夜の歌声」も皮肉が効いていて(全部効いてるんだけど)。「見る人が見れば」「青春時代」も面白い。
◆読みやすいと思ったのは書き方。仮にジョージ(コミックリリーフ)が語ったという体でなければ、そんなに面白くなかったのでは。まともな人の「わたし」(=聞き手・作者の分身)がいて、それを批判する世界を書いている。
私も一人称の独白みたいな小説を書くが、どうしてもその人の世界になってしまい、偏っていると思っても、バランスを取って修正するのが難しい。
作中で指摘する人がいるだけで読む人にとっては読みやすい。アメリカのテレビドラマを観ているみたいな感じ。
あまりこういうタイプの構成の作品を読まなかったのだが、面白い書き方だなと勉強になった。
アザゼルという悪魔は聖書にも登場する。山羊に罪を背負わせて荒野に逃がす。「scape(escape/逃げる)」と「goat」で「scapegoat(スケープゴート、身代わり)」。
C:全部読めた?
B:読めました。

<参加者C>
◆私は読みにくくて。ジョージってどんな人格なの? って思って。途中から「真面目に読んじゃいけないんだ」とわかった。この本は全部アメリカンジョークに基づくものだと気づいてから面白くなった。
アメリカは、大統領に就任したら報道陣がジョークを聞きに来る。大統領は、「大統領になった理由は、家も近くて、給料もいいし……」などと答えたり。それで爆笑。日本じゃそんな冗談を言うことはありえない。
アメリカンジョークとわかってから笑いが止まらなくなった。原文が読めたら面白さが倍増するのではないか。
アメリカ映画は死にそうな場面でもジョークを言う。でも字幕が出ないから日本人はわかっていない。アメリカの本屋にはジョークのコーナーがあって、面白いジョークを言うための本がびっしり並んでいる。文化の違いを感じた。
D:私はアメリカンジョークの作品を読んだのか。良かった(笑)。
◆ジョージが小悪魔に言う願いがちょっとずれていて、違うだろうとツッコミながら読んだ。
◆面白かったのは「時は金なり」。無駄を省いたら書けなくなったオチが面白い。やっぱり全部思い通りに進んだら面白くないだろう。
「見る人が見れば」。妻は夫のために綺麗になりたい、でも夫は妻がそのままでもいいと思っている。今、ルッキズムが問題になっているけれど、女性が綺麗を維持するためにあれこれして夫婦がだめになることは、実際に結構あるなと感じた。
「青春時代」。アドレナリンが分泌されると回避行動をとってしまうから女の子に触れない、というオチで、東野圭吾の『黒笑小説』を思い出した。オチの使い方が似ている。
H:ジョージの体をモデルにしちゃったばかりに……(笑)。
C:二重のオチになっている。
C:日本人にはついていけない皮肉も多い。「青春時代」の勉強に手を出しちゃった……とか。
それに、セコいお金の話が出てくる(笑)。こんなの日本じゃあまりない。
G:物語にリアリティをもたせるためかな。
B:必ず奢ってもらって。
H:日本の作品でこんな人を書いたら、絶対いやがられますよね(笑)。

<参加者D>
[事前のレジュメより]
 他の著書の解説で、星新一が述べていたことを紹介します。アイザック・アシモフ(1920~1992)はアメリカ・ボストン大学医学部の助教授をやるかたわらSFを執筆したそうです。雑学に関する著書が多く、多様な分野で200冊※以上の書籍を出版しました。(※解説が書かれた時点で。最終的にアシモフの著作は500冊に上った。)

《そうだな、と納得してしまった作品》
 18番目の「空想飛行」が面白かった。人間が腕をばたばた動かして空を飛ぶというバカバカしい話だがおかしかった。小悪魔アザゼルが考案した「反重力装置」を胸の部分に吸着させて空を飛ぶというのである。
 バルデュアという男は、飛ぶことを覚えると、観衆が見ているところで飛びたくて仕方なくなる。

《勘違いのおかしさ》
 10作目の「雪の中を」が痛快だった。ジョージは友人のセプティマスの山荘に居候したくて、セプティマスが雪の上を自由に滑られるようにしたいと考える。そこで、またアザゼルにおねだりをする。アザゼルは例によって反重力の法則を応用し、セプティスマの自律神経を細工して体の重さを消して雪を滑るようにする。アザゼルは水の分子の上で体重がゼロになるように細工したのである。
 一方、セプティスマは、ジョージが「H2Oの上を滑る」と言ったので、水上でも体重がゼロになると理解し、湖に飛び込んだのだ。ジョージは「固体の水の上だけで」というつもりでアザゼルに依頼していたのだが……。

《それはお気の毒、と思った作品》
 17番目の「ガラテア」。エルダベリーという女性が好む男性美を表現した彫刻の話。彼女は、この男子像が生きてこの世にいてくれたらと願う。そこで、ジョージおじさんがその願いを叶えようと尽力する。アザゼルの魔法で彫刻に命を吹き込むことができた。ところが、その男子像は、どんな時も柔らかなままだった。エルダベリーには不満だった。「硬くならない男なんて!」

アシモフの「雑学コレクション」に載っている事例は、口頭で紹介します。

[以下、読書会にてDさんの発言]
アシモフは多作な作家。私は『アシモフの雑学コレクション』を先に読んだ。碌なこと書いてないんですが(一同笑)。キリンの血圧が高いとか、ウィリアム・ハリソン大統領は雪の中で就任演説をして肺炎にかかって死んだとか……いろいろ書いてある。
◆今回のテキストは本屋に問い合わせるともう絶版だと言われ、ネットを利用して古本を買った。
◆話を伺って、私がいいなと思った作品は皆さんとずれているなと思った。
◆私がいいなと思ったのは「雪の中を」。3人の勘違いが面白い。他の作品は契約がとんとん進むけれど、この作品は恋愛ものが挟まっており重層的。恋愛が勘違いによって駄目になる。
枚数も一番多い(一番短いのが「一夜の歌声」)。
C:アザゼルを呼び出したのはジョージが別荘で過ごしたいという理由からだけど、日本人だとそういう展開にはなりませんよね。
D:私は勘違いが面白かった。H2Oの上を滑るから水も大丈夫だろうと助けようとした。実際はH2Oの個体の上だけを滑る細工をした。ジョージの勘違いが悲しい結末を生んでしまった。
◆2番目は「空想飛行」。天使だ奇跡だ、いろいろ言われるが、本人は楽しく満足してやっているだけだった。
◆それから「ガラテア」
C:これ、下ネタなんですよね。そうなるだろうなぁと思って読んでました(笑)。
D:アザゼルはハンクを肝心なときに硬くならない男にした。お気の毒に、という感じ(笑)。
C:ジョージは硬いから可哀そうだと思って「柔らかくするんだよ」と念を押した。そこが面白い。
D:「わたし」はジョージを馬鹿にしてるんだよね。でもジョージは自分をすごい人物だと思っていて、そのズレが面白かった。

<参加者E>
◆文学的ではなくてストーリーで読ませる作品もいいなと思った。
◆「型」の力が強い。右上を取ったら絶対勝つ、みたいな。「わたし」とジョージが話し出すところから始まり、必ずオチがある。SFの重鎮だと伺って感心した。鼻歌交じりに書いたんだな、と。
◆私も「謎の地響き」がすごく面白いなと思った。
「空想飛行」は皮肉中の皮肉。無神論者のバルデュアが信仰の中心になっていて面白い。
◆何かを得たら何かを失うということはある。「身長二センチの悪魔」ではバスケットボールのシュートは上手くなるが、他のことができなくなる。物事はただ上手くなればいいというわけではなく、バランスが大事。相手のシュートは阻止しないといけないし……。さすがSFの重鎮、と結末に納得した、
◆作者には、「人類が地球に悪影響を与えている」「コンピューターが人間を蝕むようになる」と警鐘を鳴らす気持ちがあるから、作品に深みが出ているのだと思った。「謎の地響き」P73の人類は滅ぼしたほうがいいというくだりなど。他にも2ヵ所くらいあった気がする。軽い作品だけど底流に思想があるから面白いのではないか。
◆(社会の)女性に対する考え方はずいぶん変わったんだな、と。作品が書かれたときから時間が経って、男女雇用機会均等法や、ミスコンを廃止しようという動きなどもあり、女性の地位は上がってきたが、かつては平等ではなかったんだという驚きがあった。
ジョージの性的対象が若くて弾力のある女性だったり、妻以外の女性にモテたいという男性が出てきたり……今だと問題になる。
C:作者は1929年生まれ。西暦で言うとわかりにくいけれど日本で言うと大正生まれ。(価値観に)納得する。
E:女性自身も問題に気づいていなかった。
C:ブロンド頭は頭がからっぽ、と揶揄うジョークが主流になっていた。
E:映画『プリティ・ウーマン』(1990年、アメリカ)。売春婦の女性が自立していくストーリー。最初、リチャード・ギア演じるエドワードが、ジュリア・ロバーツ演じるヴィヴィアンをお金で買うんです。
I:作品としてはよかった。
E:私も、ヴィヴィアンが綺麗になるのが楽しかったし、エドワードは格好いいし……でも、今の価値観で見ると引っかかる。
C:マリリン・モンローもあほな役ばかりやらされていた。
E:価値観は時代とともに変わる。今は『風と共に去りぬ』も人種差別という観点から一部配信サイトでは配信が停止された。
10年、20年経ったら、今を振り返って「当時は結婚入籍とかしてたんだ」となるかもしれないし、わからないですね。
◆面白かったです。ありがとうございます。

<参加者F>
◆私は中学生のころ星新一の作品に触れていたけれど、当時この作品を読んでいたらわからなかっただろうなと思った。
アシモフは、『われはロボット』を原案にした映画『アイ,ロボット』(2004年、アメリカ)を観て感動した。
あの作品の作者かと思って読んだらアメリカンジョークばかりで最初は読みにくかった。慣れてきたらすらすら読めたんですが。初めのうちは馴染まなかったブラックユーモアがだんだん楽しくなってきた。
昔の作品なので「えっ」というところがたくさんあったけど、アメリカンジョークのような言い方をしているのが面白い。
◆作品の根底に「ロボット三原則」など、きっちりした思想がある。
「理の当然」「見る人が見れば」「主義の問題」が印象に残った。
ユダヤ系ロシア人もアメリカで育てばこうなるんだと思った。

<参加者G>
◆読んでまず、話がしっかり考えて作られていると感心した。読み物としてよかった。
◆ジョージの話を「わたし」が書いているが、実際に考えたのはアシモフ。書き方が面白い。よくこんなに書いて楽しませてくれたな、と。
◆少し前に図書館で借りて読んだのだが「面白い」ということだけが残ったので、笑いを狙って書いたのかなと思った。

<参加者H>
◆ユーモアに溢れていて、全体的に面白かった。
◆ところどころアシモフの創作への姿勢や編集者へのジョーク、批評家への皮肉などが垣間見え、創作する人は興味深く読めると思う。
◆「わたし」と、「わたし」にツッコむジョージのやり取りは、作者の脳内会話のようで楽しかった。
◆言語や特定の民族に多い姓名、舞台になった地域の知識などがあればより楽しめたと思うので少し悔しい。登場人物の名前からはルーツやキャラクター造形の意図がわかるだろうし、実名で出ている店を知っていれば登場人物の生活レベルを予想できるだろうから。
それは他の海外文学でも同じなのだろうけれど、この作品はブラックユーモアやジョークがたくさんあり、基礎知識や文脈の理解が必要なものも結構あったと思う。
◆これを言うのは野暮かもしれないが、やはり昔の作品なので、女性の扱いなどが引っ掛かった。この作品が日本で出版されたのは1996年。そのころの日本のテレビ番組も、今観ると「やばいな」と感じることが多い。私自身も当時は何も感じなかったが、時代が進むと感覚も変わってくる。だがそれは当然のことで、だから昔の作品に触れない、というのは違うと思う。昔があって今があるので。
ただ自分で書くときは、しっかりアップデートさせた感覚で挑まねばと思う。
昔の作品を読むときは、今の感覚よりも、当時の時代背景や作者の立ち位置を加味して考えたほうがいいかもしれない?
◆内容に関して。訳が巧いためかサクサク読めた。読みやすいだけでなく、実は詩的な箇所もちょいちょいあってよかった。
「身長二センチの悪魔」P27「どこまでもつづくちょっとした庭」など。原文はわからないが。
◆個別の作品について簡単にいくつか。

「強い者勝ち」。漫画チックで面白い。女の子が全速力で二ブロックほどタクシーを追いかけてきて……はジョージの軽口だと思っていたら、本当に追いかけてきていたとは(笑)。スケベな男性がひどい目に遭っているのがいいですね。

「謎の地響き」。私はとくに理由がない限り、最後まで順番に読んでいくのだけど、それまでの話と毛色が違って面白かった。こういう感じの不穏なラストって今も多いですが、これが元祖なのかな?
P76「頭の中身の特徴だよ」「全体的におかしい」などのやりとりが面白過ぎる。

「人類を救う男」アシモフの先見性がすごい。今はコンピューターだらけだから、アーミッシュにでもならないと生きていけないのでは(今はアーミッシュでもスマホを持っている人がいるらしいのですが)。コンピューターが暴走したら役立ちそうではあります。
西尾維新の作品に、コンピューターに嫌われていて、地上でコンピューターを触っただけで衛星が自分めがけて突っ込んでくる女の子が登場したのを思い出した。西尾維新も読んでいそう。
F:映画『アイ,ロボット』もロボットが人間に危害を加える話。やはり作者にはコンピューターが人間に害を及ぼすかもしれないという思想がある。

「主義の問題」。私もこの脳になりたい! と思った(笑)。
アザゼルは相変わらず人(悪魔?)がいい……。何気に一番常識的ですし。
ところで上司のゴットリーブやファインバーグってユダヤ系の名前ですよね。やはりこのようなイメージなのか? 他の作品も、民族に対する皮肉やジョークになってそうで、読み取れないのが悔しい。

「酒は諸悪のもと」。女性に対してひどくない? と思った。

「時は金なり」。むだな待ち時間がなくなったら、書き物をしている人だけではなく、誰でも窮屈になるよな、と思う。真理を突いている気がする。
C:でも日本って結構スピーディーなのが当たり前。パリで何かを注文すると、何ヵ月も来ないのが普通。
H:海外ではストとかもよくあるそうですね。

天と地と。女性絡みの話がなくて、ブラックなのがいい。収穫逓減は利益の増加分がだんだん小さくなるので、任期も短くなるのかな。作者の知識が豊富すぎて感心した。

「心のありよう」。ジョージ自身がオチになっているのが面白い。

「青春時代」。ここまで読み進めるとパターンに慣れてきて、P272のアザゼルの説明「恐怖や怒りや情熱を感じたときだけ……」でオチが読めた。でも、性欲はあるのに誰とも触れ合えないのは予想以上に辛そうだった。

「ガラテア」。一番好き(笑)。下ネタやん! って思ったけど、ここまでだといっそ清々しい。芸術家のエルダベリーが飛んでて面白い。

「空想飛行」。P319「空気が大きなゴムバンドになって」……こんな体験をしたことはないけれどリアリティがある気がする。物理の知識が創作に活きていそう。

◆数日で一気読みしたので、私自身がパターンに慣れてしまったのが少し残念だった。1週間に1作みたいな感じで読めば、なお楽しめたかもしれない。ばらばらに掲載されているものって、そういう読み方をされる前提だろうし。今の時代だと、もっと全然違うパターンの話も用意しろと言われるかも?
◆教養に満ちて、でも気楽に読めて、いい読書体験でした。

<フリートーク
【作品の書き方について】
I:これは一話ずつ載せていく作りだったのかな。
A:雑誌に一話ずつ掲載されていたみたいですね。
B:軽いタッチだから読みやすいけど残らない。
E:そのとき楽しむ作品。
D:Iさんの作品は今回のテキストに似ているけど、Iさんの作品のほうが重みがある。
I:うーん、今回のテキストは知識量がすごいですよ。
A:いや、これもはったりです(笑)。
E:アザゼルが不機嫌に出てきて、ね(笑)。
D:アザゼルはどういう世界に住んでるんだろう?
A:経緯にも書いてあるけど、人類の世界より優れた異世界
G:適当だけど、えいやって書く。そういう作品にするのがいいんですかね。書き手の技量じゃなくて、なんて言うか……。
B:適当なこと書いてる?
G:全然間違いではないけど勢いで。
E:いいんじゃないですか。楽しむために書く作品も。
A:これは相当不真面目に書いてるんじゃないかと。
B:単純にジョージが主人公の話ではなく、「わたし」がいるからバランスが取れている。ジョージの話という建前があるから何を書いてもいい。
A:アザゼルなどいなくて、ジョージのほら話かもしれない。
E:あくまで妄想かもしれないと納得しますよね。
A:「謎の地響き」で面白いと思ったのは、どこまでほらなのかわからないジョージに輪をかけた、妄想か真実かわからないことを言う男が出てくるところ。本当だとしたらえらいことなんだけど、どうにもできない。正常と異常の狭間を匂わせながら終わるのが巧い。
C:小説講座の講義で、小説っていうフィクションの中に「これは実話です」って書くのはオッケーって聞いた。そこからもうフィクションになる。
E:面白いものを書こうとするほど真面目じゃないと。

【表紙について】
C:文庫本の表紙絵が不思議だった。
H:思いました! 2cmのはずなのに大きすぎるって(笑)。
C:そう、違和感が。
A:そこを厳密に描くと、絵として成立しないのでは(笑)。

【自分の創作について】
C:自分が女性を書くとき、「綺麗じゃないと」っていうのが刷り込まれていたけれど、なんで綺麗じゃないといけないのか疑問に思って。大正時代の小説に書かれた女性も綺麗だから、そうじゃなきゃ、と思っていた。川端康成も少女や綺麗な女性をヒロインにしてましたよね。
I:綺麗じゃなかったら読者が入ってこないからでは。
D:そうですね。
C:そうなの!?
I:女性もイケメンのほうがいいでしょう?
H:ドラマではイケメンがいいですね。小説は……頭の中でイケメンにするかも……。
I:今は小説内に「綺麗」とそのままでは書けないですよね。
C:「綺麗」は人によって違うから。
E:文章は楽譜でいいんです。読み手によって受け取り方が変わるもの。下手な人が大江健三郎を読んでもわからない。読むという行為は能動的。登場人物の容姿の描写はなくても想像しながら読む。
H:私は美形を思い浮かべる……。
E:そうですか? 僻みっぽいとか、ラーメンが好きとか、陰キャとか、いろいろな造形があるけど。
H:Eさん、キャラ作りが巧そうですね。
E:私は映画とかよく観るから。書くとき、この人物はこの俳優さんだなって思っている。
I:私はキャラクターを作るのが苦手。
E:やっぱりどれだけ書いているかですよね。
I:たとえば柔道の選手は1日6~7時間も練習をするそう。
A:そのことについて努力できるのが一番の才能ですね。