読書会LOG

R読書会/Zoom読書会

『黒牢城』米澤穂信(KADOKAWA)★R読書会

R読書会 2022.04.30
【テキスト】『黒牢城』米澤穂信KADOKAWA) 
【参加人数】7名
※オンラインでなく対面形式でした。

<推薦の理由(参加者G)>
◆第166回直木賞には、今村翔吾『塞王の楯』と米澤穂信『黒牢城』の2つが選ばれた。両方とも歴史小説。その中でも、『黒牢城』を読みたいという皆さんの意見が多かったので今回取り上げた。
黒田官兵衛荒木村重が5回ほど牢のところで面会する場面が印象に残っている。レジュメにはたくさん書いたが、私なりに楽しんで読めた。互いに胸の内を覗こうとしている心理合戦が一番面白かった。
◆存在感があったのは側室の千代保。長島一向一揆の生き残りである千代保が有岡城で籠城することになるのだが、そういう経験がある彼女だから説得力がある。一向宗について詳しく書いているので興味を持って読めた。
◆官兵衛の頭の怪我はどうしてできたのだろう。牢番が殴ったように書かれていたけれど、官兵衛本人が頭を打ち付けて、どうにかしようとした牢番が入ってきた、としたほうが素直に読めるのでは。
私が知らないだけで、歴史的にはっきりしている事実なのだろうか。蛆が湧き、村重が目を背けるほどの怪我はどうしてできたのか。皆さんはどう読んだのか教えてほしい。

<参加者A>
◆Gさんが薦めてくださったときに私も半分くらい読んでいて、面白い作品だと思ったので一緒に薦めさせていただいた。
◆官兵衛の頭の怪我について。調べると、幽閉されているときに醜い傷がついたという事実はあるようだ。
◆私は歴史小説を結構読むのだが、この作品は文章に素晴らしくキレがある。端的で切れ味が鋭く、研ぎ澄まされている。無駄が少なく惹き込まれた。
歴史小説ならではの難読な漢字もあって辞書を引きながら読んだ。
◆作者の過去作を読んでいないのだが、この作品で初めて歴史小説に挑戦したと聞いて驚いた。歴史小説にこんな書き手がいるのかと思ったのだが。
◆主人公の荒木村重が口数少なく武士らしい。作品によく合っている。
私は荒木村重のことを大まかにしか知らず、家臣を置いて逃げたずるいイメージしかなかったが、この作品では違う。伊丹市ポータルサイトにも人の命を大切にする武将と書いており[注1]、いろいろな説がある。今までとは違う村重像を読むのが楽しかった。
◆ストーリーについて。城の者を置き去りにして逃げるという着地点はわかっているが、その過程に作者なりの解釈があり楽しく読めた。
第一章は灯籠を使ったトリックの謎解き。それを解いたら皆の疑心が晴れたと思えたが、二章、三章になると、謎を解いても疑念を払拭できなくなり、村重はそれに抗う。機運がどんどん下がっていく構成はどこか暗いが面白かった。
最後は官兵衛のどんでん返しが来るかな、だしの方が絡むのかなと思ったらその通りになった。抗えない村重という、ちょっと悲しいストーリー。
◆時代小説を読むときにいつも思うのが、「今の時代でも同じ」ということ。どちらの陣営も情報戦をしているところが現代の戦争と共通している。
また、何をやっても上手くいかず、どんどん悪くなっていくことがあるのも同じ。村重も上手くいかず苦しむが、籠城で抗っている。骨太な作品だと思った。
G:明智光秀に寅申を渡そうとするのは史実?
A:あれはオリジナルだと思って読みました。

<参加者B>
◆読むのに苦労した。時代背景に基づいた難しい言葉などを辞書で引きながら読んだ。でも変に修飾するのではない、端的な文章に潔さみたいなものを感じた。
◆読書会だから何とか読めた。一人だったら途中までになったかも。
◆Gさんの仰るように、官兵衛が登場する場面は少ないながらも非常に生き生きとしており、その部分はささっと読めた。
◆村重は煮え切らないというか、格好つけているというか、どうしても好きになれなかった。
語っているようだけど、すとんと落ちてこない。
人を殺す信長に対し、村重は殺さないという立場。そのために官兵衛が生き延びて息子と再会できた。誰でも彼でも殺せばいいわけではない、という人もいたのだろうか。
◆各章でミステリーがあって、謎解きして、官兵衛のところへ行って、答えに辿りついて裁断するわけだけど……私は千代保が黒幕だと想像していなかったので落ちきっていない。
第二章でも、結局誰が討ったのかわからない。「お前たちのどちらでもない。とにかく戦に勝ったんだ」みたいな結末で。どの章も、全部そういう半落ちで終わっているから、それでいいのかという感じがしていた。でも、千代保がラスボスで操っていたから、それでよかったのか。この人、スーパーウーマンすぎない? これほど策士なら信長との仲を取り持ってくれてもいいような。
◆一番無理があると思ったのは、民への想いを語るところ。圧巻なのだが、このような罰が下ることで民が安らいだのか。自己満足な気がした。
◆よかったのは、今とは違う、当時の死生観が示されていること。村重たちの死生観、千代保の死生観を二元論で戦わせている。戦国時代だからといって、皆が死など怖くないわけではない。救わなくてはと訴えている。さまざまな細工をすることに繋がるかはわからないが、千代保の死生観は素晴らしい。
◆よくこれだけピースを重ねられるな、と思った。頭の良さ、作品に対する執念深さ・粘り強さがすごい。これからどうなるか史実を知っているから、こういう形で書いているのは素晴らしいと思った。

<参加者C>
◆『黒牢城』は、以前、別の読書会でも取り上げたことがあり、読むのは2回目。
◆私も読み始める前は、荒木村重について「籠城して、官兵衛を幽閉して、最後は逃げ出した」ということしか知らなかったが、戦国時代が舞台の大河ドラマを何作か観ているのと、舞台になっている場所に少し土地勘があるので、読みにくくはなかった。
◆やはり歴史小説というより、戦国時代が舞台のミステリーだと感じる。ただ、ミステリーとしては物足りない。出てくるトリックを現代もので使うと、そこまで映えないのではないだろうか。戦国時代が舞台で、この先の歴史を知っているから、事件の一つひとつがどうトリガーとなるのか、期待が生まれるのだと思う。
また、千代保が鍵を握っているのは早い段階で仄めかされているので、その動機を考える楽しみもある。

<参加者D>
歴史小説として読むと物足りない。私は、歴史小説では、司馬遼太郎国盗り物語』で描かれているように、いかに日本を支配するかを面白く読むので。
ミステリーと聞いて納得した。通常、歴史小説にトリックは入れないが、この作品には遊びがある。そこが高く評価された理由だろう。
荒木村重は、信長や秀吉を主人公にした小説で、官兵衛を幽閉した人物として、よく登場する。もうちょっと村重という人物について読みたかった。なぜ裏切ったのか、なぜ官兵衛を牢に入れたのかなど、人物像がいまひとつわからない。一応、作中で語ってはいるが、どうなのだろう。私は視点が少し違うのかなと思った。
◆ちなみに秀吉が主人公の小説では、秀吉が信長に「官兵衛は裏切っていない」と言って、官兵衛をこっそり助けたりする。秀吉をいい人物として描いているから。
◆読んでいて、残りページが少なくなってきて「どう種明かしするのかな」と思っていたが、千代保がすべての鍵を握っているというのは少し苦しいと思った。
◆籠城している人たちの心理描写が面白い。長くなればなるほど疑心暗鬼が渦巻いていく。そこが一番面白かった。

<参加者E>
◆読み始めるのが遅くて全部読み切れなかった。
◆難しい語彙が入っている重々しい時代劇口調の割に台詞の内容はわかりやすく、上手い書き手なんだなと思った。
◆作品の評価とは別だが、戦国とはこういう時代なんだと引いた感じで描写している序章と、本編の雰囲気が異なっていてすごく読みにくい。冒頭は本編のような描写になっていない。はっきり言って生きていないので、「大坂は城と砦に囲まれている。」から始めてもいいと思う。
又吉直樹『火花』も、冒頭数行は文学めかしている割に文が整っておらず読みにくかったのを思い出した。私はどちらも編集者がつけたのではと疑っている。
◆全体を読めていないので評価はまた。勉強します。

<参加者F>
◆すごく苦労して読んだ。私は東京出身なので、まず北摂がどこかわからなかった。
歴史にまったく詳しくなくて、登場人物のメモを取りながら読んだ。「村重、織田に謀反して、有岡城に籠城し……」みたいに。2ページで眠くなったが、P100を超えたあたりから話が見えてきて、P200からは1日かけて一気に読めた。
◆作者の目の付け所がすごい。実際、官兵衛は1年間幽閉されている。冬から始まって、3ヵ月に1度くらい地下へ下りていく。そのストーリー展開が面白い。こういうところに目を付けるのか、と。
長い歴史の中で幽閉されている1年間にフォーカスして、こんなに力を入れて書くのはすごい。
田村由美『ミステリと言う勿れ』の主人公みたいに、訳もわからないまま与えられた謎を解いていくのかと思ったら、大どんでん返しがあって。私は、官兵衛が村重を騙していたことに気付かなかったのですごいと思った。最後のほうはサクサク読めて楽しかった。
◆武士言葉が癖になる面白さ。「民草」は、人民を草に例える、中国の古い故事に由来しているそう。「太り肉」とか読み方が面白い。あと「風聞」とか。
◆神社仏閣は位の高い人が建てたもの。庶民は、殺されて本当に極楽浄土に行けるのかという不安があったのでは。千代保が安心させようとするのは、すごく納得できた。
◆テーマは何なのか考えた。
P375に「信長は斬り、村重は斬らぬ……その評判は天下に広がっただろう。(中略)すべては武略であった。」とある。そうなんだと、素直にそのまま受け取るしかない。
100ページごとに村重がどうしてこうしたのか、ちょこちょこ書いてあった。Ex)P118「信長と同じ道を行くことこそが荒木家の滅亡を約束するからだ。」
P417 、「村重、我が子を殺したのは、おのれを慈悲深く見せようというおぬしの見栄よ!」村重がどうしてそうしたのか書いてある。
テーマは「抗うこと」かなと思った。どんな世にあっても、社会に抗うことは大切である、と書いているのでは。
◆悩ましき句読点。句読点には現在規則がない。この作品の句読点の打ち方がとてもいい。P299、「村重は、ひとりだ。」。ここだけ主語に読点。「一人だ」が協調されていて、正しい打ち方だ! と思った。
◆楽しい本だった。一人では(=読書会のテキストでなければ)読み切れなかった。
◆不思議だと思ったのは寅申。茶器がそんなに重要なのか。
E:領地を与える代わりに茶器を与えたりしていた。
A:松永久秀は古天明平蜘蛛という茶釜を渡さずに自害した。

<参加者G(推薦者)>
[事前のレジュメより]
≪骨太の作品だ≫
 四つの謎解きをしながら進行する物語。荒木村重と官兵衛の心理戦が見事に描かれている。土牢へ閉じ込めた官兵衛を村重は五度訪れている。籠城が長引くにつれ城内での不調和が広がってゆく。毛利の助けを待つだけの陣中の焦りが猜疑心となって表面化していく様子が丁寧に描かれている。その中で対応が困難な事件が起きる。これへの対応をめぐって二人の心理戦が行われる。ミステリー仕立ての骨太な物語だ。官兵衛を村重の指南役として位置づけてこの物語を書いたところが面白い。

≪官兵衛のすごさ≫
 官兵衛のすごさが描かれていると思った。一つ目は、牢内にいて村重の話を訊いただけで事件の謎解きをしてみせるところである。二つ目は、牢番ふたりを短期間の間に洗脳し、思うように操っているところである。

≪存在感があった側室の千代保≫
 村重は彼女の美しさの由縁が「いのちを諦めたところから生じているのではないか」ととらえているようだが、その彼女が城内の危機を何度も救っている。「仏罰」を城内の者に示そうとしたことなどは、籠城戦を経験している者だからこその発想である。

≪官兵衛の頭の怪我≫
 「この傷の礼に、かの者とは少々話をいたした」(P212)と官兵衛が言った場面が理解できなかった。この言葉そのものは、官兵衛の独特の皮肉っぽい言い方なんだろうが、この文脈が分からなかった。牢番に打たれて負った頭のひどい怪我。これと、村重に斬りかかるように洗脳できたことがどう繋がるのか理解できなかった。皆さん、教えてくだされ! もしかして、この場面は私が知らないだけで、誰もが知っているところなんだろうか? あるいは、この怪我は官兵衛自らの手で負ったものと考えられないだろうか? その傷を牢番が手当をしてくれた。その時、村重を襲うように唆す話をした。こういう文脈ならよく理解できる。

[以下、読書会にてGさんの発言]
謀反を起こした理由については納得できた。信長が残虐で殺し過ぎるから、恐ろしくて離れたのだろうと思う。反逆するなら信長の逆をやろうと考えたのかなと。きっと、明智光秀の謀反と似ているのでは。その(=光秀の謀反の)先ぶれみたいな。
先ぶれとして、もう一つ。信長は、大坂では一向宗を殺さずに逃した。信長は統治していく上で、従わなければ殺すというやり方を変えて、場合によっては生かすようになった。有岡城の処刑も、そういう過程の中の一つの事件としてあるのではと、難しく考えずに受け止めた。

<フリートーク
【作中の言葉遣いについて】
D:一般的に男性は時代ものが好きだけど、女性はそうじゃないと思っていたが。
F:だって男ばかり出てくるんだもん。
C:私は結構好きですけどね(笑)。
E:『黒牢城』は、ジェームス三木みたいな重々しい口調に寄せているけど、最近は若者口調に寄せている作品も多いですね。和田竜『忍びの国』の台詞とか、現代的でわかりやすい。
D:今の大河ドラマ(『鎌倉殿の13人』)も。
F:標準語ができたのは最近。昔は方言で喋っていたから、正確な話し言葉はわからないはず。

【人物の描き方について】
F:表では「はい」と言っているが、裏で何かを考えている村重を好きになれなかった。面従腹背の謀反人。結局、見栄だし。
A:見栄ですよね。
D:歴史にはそういう人が多い。
A:人を殺さないのも武略。
B:自分の風評のため。
A:冒頭のプロパガンダみたいなものを作品中で巧く使っている。
F:千代保がいなくていいところに出てくるから、犯人だとわかる。
C:第一章の火鉢のところから怪しいですよね。
F:ミステリーでは犯人じゃなくていい人が犯人。
村重が44~45歳くらい、千代保が20歳くらい。官兵衛が32歳くらい。このときの年齢が面白い。

【牢番と牢について】
D:官兵衛に唆された牢番が村重を殺そうとして、逆に殺される設定かなと思った。
G:官兵衛が言外に「自分がやった」と仄めかしている。官兵衛は牢番に村重を殺させたかった。
D:それはそうだけど、牢番に仕返しをしたのかと思った。
G:官兵衛が牢番に語りかけたのはすごい。
A:牢ってあんなに狭いんですか?
D:他の作品でもそう。幽閉の間に足を悪くしていて、戦でも馬ではなく輿に乗っていたり。
A:有岡城の官兵衛って、牢に入れられてたのではなく厚遇されてたという説もある。この作品では最初に御前衆を殺してしまっているから、牢に入れざるを得ないけれど。
補足)後の参加者A調べによれば、"厚遇されていた"との説は見つからなかった。ただ、"幽閉はそれほど過酷ではなかったのではないか"と窺わせる史料(2013年に見つかった官兵衛から村重にあてた書簡)がある。これを見ての発言です。[注2]

現代社会と似ているところ】
F:当時の人質の在りようが、今だったら考えられない。磔にするなどもありえない。
B:敵のしゃれこうべを盃にしたり……
E:それはさすがに特殊ですけど、首を晒すのは相手の戦意を削ぐという意味がある。
A:第二章のトリックは好きですね。歴史小説は戦いがメインのものが多いけれど、この作品は戦いではなく、手柄を妬まなくていいとか着眼点がすごい。
B:会社組織みたいなところはありますね。社員はどう働くか。社長に取り入らなきゃいけない。自分が死んでも子孫のために書状を残すのは、労災の書類みたいな。
A:潰れる大企業の行く末のような感じ。
D:官兵衛はすごい知恵者だったみたいで。秀吉がいなければ、彼が天下を取ったんじゃないかと言われている。
F:今でも策士っていますよね。会社でも。
D:正面からぶつかっても天下を取れないから、どう落そうかと考える。
F:もともと人間ってそういう面があるのかな。生き残るために。民間企業で見てるんです、男たちのドロドロを。

【女性の地位について】
A:第四章の、千代保と村重が対峙する部分がこの作品の肝なのかな。民の想い。民が恐れるのは死ではない。2人の議論を戦わせて巧くまとめている。冒頭に「退かば地獄」とあるがプロパガンダですよね。政教一致みたいなことを都合よく伝えている。
F:「進めば極楽」……官僚の言葉なんです、従わせるための。戦に行く人は、肝に銘じて戦に行くでしょう。
E:いえいえ、浄土真宗一向一揆で集った民衆たちのほうがこういうことを言ったんです。死んだら極楽に行けると。宗教って恐ろしい。
F:民は死ぬのが怖かったんじゃなく、極楽に行きたかった?
E:生きていると苦しいですからね。一向一揆の鎮圧は、武将同士の戦いよりも大変だった。
B:当時、(この作品の)だしの方のように自立した女性はいないのでは。アイデンティティのある女性をうまいこと入れている。
E:女性の地位は時代によって違う。平安時代は女性の側にも家長権や資産があった※家長権というのは誤り[注3]。一般の民衆でも女性で職人の棟梁になった人もいた。現代人が想像するほど抑圧されてはいなかった。女は三歩下がって……と言い出したのは武家が安定してから。それ以前は出雲阿国もいたし、そこまで女性に人権がなかったわけではない。
A:このころの女性は言うこと聞いてくれたんですかね。今はこちらが抑圧されてる(笑)。
D:この時代はあくまで政略結婚。奥さんもスパイだから信用できない。実家に情報を流すので。
E:濃姫などもそうですね。
D:長男を生むと、さらに権力が増す。力があるといえばある。宇喜多直家とかすごいですよ。娘を嫁にやっておいて、嫁ぎ先を攻め滅ぼす。
F:この時代、世界中でこうだった?
E:どの国にもこんな時代があった。中南米のアステカでは捕虜や奴隷を生贄にしていた[注4]。人間は文化的なものがあったら突っ走る。こんなことは世界中であった。

【地域について】
F[東京出身]:東京で「行けたら行く」って言うと、行く気満々なんです。関西で「行けたら行く」って言うと100%行かない。
C[岡山出身]:岡山でも、「行けたら行く」「検討します」って断り文句なことが多いですよ。職場の、関西から来た営業さんが戸惑うくらい(笑)。
A[奈良出身]:友人と話していて、「岡山は天災もないし、岡山だけで生きていけるから、プライドが高いんじゃないか」という結論に至ったことがある。ちょっと京都っぽい。
E[広島(備後)出身]:はっきり主張しないのは引け目があるからでは。
C[岡山出身]:引け目はあるかも。相手が嫌な気持ちになるかな、みたいに考えちゃって。
D[岡山出身]:岡山を作ったのは宇喜多直家。裏切りと策略。そのイメージがあるのかな。
F[東京出身]:信長、秀吉、家康はみんな愛知出身なんですね。面白い。
E[広島出身]:愛知に生まれた時点でアドバンテージがある。京都から遠すぎる場所に生まれたら、有能でも地方の大名で終わるしかない。

【その他】
E:毛利は、信長と兵庫県の大名たちが喧嘩しているとき、(兵庫県の大名たちを)バックから支えている。
A:村重の家臣・荒木久左衛門は、村重が追放した池田勝正の弟なんですね。
E:織田信長の子や孫らが、かつての家臣筋であった豊臣政権下で小大名に甘んじた例もある。家が落ちぶれると、かつての家臣の部下にならなくてはいけない。

<注釈(参加者Aさんから頂いた補填資料より)>
[注1]伊丹市観光物産協会HP 村重たみまるについて
http://itami-kankou.com/murashige-tamimaru

「村重の悪人イメージの流布は勝利側によるもの」と題して、
------以下、引用------

“(前略)黒田官兵衛が謀反をやめるよう説得に来た際、官兵衛の主君・小寺政職から殺害を依頼されていたのに村重は彼を殺さず牢に入れて保護していました。官兵衛はこれに恩義を感じ、村重の子孫を黒田藩に召し抱えています。”
------以上、引用------

といった記載があります。

[注2]
毎日新聞・2013年12月03日 リンク先見つからず、一部割愛して転記)
------以下、引用------

黒田官兵衛:荒木村重への書簡の写し発見 本能寺の翌年」
兵庫県伊丹市立博物館は2日、戦国武将、荒木村重(道薫)に幽閉された黒田官兵衛が、後に村重に送った書簡の写しが見つかったと発表しました。(中略)文面からは親しげな関係がうかがえ、研究者は「幽閉は過酷なものではなく2人は変わらずに親しい関係だったのでは」と分析しています。(中略)書簡は本能寺の変で信長が討たれた翌年の1583(同11)年に書かれたものです。(中略)村重から光源院の領地問題の相談を受けた官兵衛が返書を出し、これを村重が書き写し、交渉が順調だと伝えるために光源院に送ったものとみられます。
「秀吉様のお考えどおりに間違いのあるわけがありません」と秀吉をたたえる言葉や「姫路へのお供をされるのであればこの地へお出(い)でになるだろうと存じていたところお出でになられず、とても残念」と再会できなかったことを惜しむ文がつづられていた。神戸女子大の今井修平教授(日本近世史)は「文面からは遺恨は感じられない。茶人となった村重が政治に関与し秀吉の下で力を合わせて政策を実現しようとする2人の関係を示す貴重な資料だ」と評価しています。“ 

------以上、引用------

確かに、過酷な幽閉ではなかったのではないか、と思わせる内容です。

<注釈(参加者Eさんから頂いた補填資料より)>
[注3]発言がざっくりしすぎておりました。まず、古代の「家」についてですが、

平凡社 世界大百科事典
2巻P105【家】日本・古代の項
「当時の家族の実態は父と子、夫と妻が別々の財産をもっていることが多く、(略)家が父から長男へ継承されるという近世的な家の制度は、古代社会には存在していなかった可能性が強い。もっとも、(略)律令は父子の関係を基本とするイヘの制度を創設し、それが後の家の制度の源流となったと考えられるが、(略)〈家をつぐ〉という観念が、はっきりした形で成立してくるのは、院政期ころからの可能性が強い。►►►戸」(吉田孝)

つまり古代には後のような家長の采配する家そのものがなかったわけで、「家長権があった」というのは間違いです。すみません。
ただ、「近世的な家の制度」が確立する以前の古代から中世においては、男女均分相続という財産権の平等が見られ、一般に同一身分内での男女格差は小さかったと考えられます。
鎌倉時代には正式に地頭や御家人となる女性もいたそうで、また中世の家では北条政子や今川家の寿桂尼のように、夫の死後に妻が実質的な家長として執務する例もよく知られているかと思います。
(以下の所資料を参考にしました)

◎呉座勇一『日本中世への招待』(朝日選書)
◎脇田晴子『中世に生きる女たち』(岩波新書
◎『新書版 性差(ジェンダー)の日本史』
 (集英社インターナショナル新書)
◎1994年版岩波講座・日本通史 第8巻・中世2
 坂田聡『中世の家と女性』
平凡社 世界大百科事典
 2巻P105【家】日本・古代の項
 16巻P304【相続】相続の歴史・日本・古代の項
鳥取県公文書館
  新鳥取県史を活用したデジタル郷土学習教材
  女性の地頭─鎌倉時代ジェンダー
  https://www.pref.tottori.lg.jp/secure/1251968/c551_1.pdf

[注4]高山智博『アステカ文明の謎 いけにえの祭り』(講談社現代新書)に詳しい記述がありますが、ここは簡便にまとまっている以下のページを貼っておきます。
◎井関 睦美(いぜき むつみ) / 明治大学 商学部 准教授
  古代メキシコアステカ文化の世界観
  https://www.surugabank.co.jp/d-bank/event/report/130917.html

 

米澤穂信『黒牢城』はZoom読書会でもテキストになりました! 読み比べたら、メンバーが変わると、出る意見も変わるんだなとわかって面白いです。